
会社設立を計画している、あるいは会社設立に向けて既に動いている人へのアドバイスです。起業する前に会社勤めしていた方はご存じでしょうが、会社を設立・運営していくにはいくつかの印鑑が必要です。この記事では、会社の印鑑にはどんな種類があって、どのような手続きが必要か、どのように選べばよいかを説明していきます。
会社の印鑑の種類について
会社の印鑑は大きく分けて、代表者印、会社銀行印、社印、作業印(その他の印)の4種類の印鑑があります。代表者印と会社銀行印は兼用してもよいのですが、専用の経理部門があるような規模の会社であれば、通常分けて作ります。
また役割が異なるので、紛失のリスクを考えると別に作っておいた方がよいでしょう。
代表者印って何?

代表者印は会社の設立にあたって、会社の登記を行うのに使用する印鑑です。これを作らないと会社を設立することができない大事な印鑑です。その後も「会社の実印」としての役割を持ち、代表者の承認を示す印鑑となるので、とても重要な印鑑です。
社外との重要な契約や会社の意思決定を行う書類などに押印されます。実際には契約書はサインでも構いませんし、社内書類も代表者印が必要かどうかは会社の規定で定めればよいので、必ずしも代表者印を押印する必要はありませんが、会社の正式な書類であることを示すために代表者印を押印するのが一般的です。
会社銀行印って何?
会社銀行印とは、会社が法人銀行口座を開設する際に金融機関に登録する印鑑です。その他にも、口座の預金の引き出しや振り込みを行ったり、手形や小切手を発行する際にも使用します。
経理部門がある場合、そこの長が管理することが多いです。また、銀行の融資を受けるときは、この印鑑と代表者印が必要になるので、そういった点から見ても、代表者印とは分けて作っておいた方がよいでしょう。
社印って何?
会社の契約書や領収書など、社外に発行する書類が正式なものであることを証明するために押印するものです。代表者印が「会社の実印」なら社印は「会社の認め印」です。代表者印を用いるまでもない公式書類に使われる印鑑と覚えておきましょう。
認め印といっても、印鑑としての効力はありますので押印するときはしっかり確認しましょう。代表者印が丸いので通称丸印と呼ばれるのに対して、四角い印なので通称角印とも呼ばれます。一般的にはその会社の正式社名を刻印します。
最近では英語の社名を刻印した社印も存在します。社印だけでは公文書として認められない場合もありますので、重要な契約書等には代表者印も合わせて捺印します。
作業印って何?
主に事務作業で使われる印鑑です。伝票や納品書などといった事務書類に、住所・電話番号・社名など、必ず記載する語句を押印で済ますために用いられます。スタンプ面がゴムで作られているため、ゴム印とも呼ばれます。
個別には住所印、宛名印などと呼ばれます。証明印ではないので必須とは言えませんが、頻繁に使うことになりますので、用意しておいた方がよいでしょう。
会社印鑑として使用するための手続き
代表者印は、会社の本店を管轄する法務局かその支局や出張所へ行き、印鑑届書を提出して登録します。このとき、会社実印として登録する印鑑を持参する必要があります。印鑑届書には代表者の意思確認が必要なので代表者の実印を押します。
代表者の実印の印鑑証明は登記申請書に添付したもので援用できます。代理人が登録する場合は委任状が必要で、代理人の印鑑(認め印でよい)による押印も必要です。会社銀行印は法人口座の開設手続きを行う銀行で登録します。
法人口座の開設には登記簿謄本(履歴事項全部証明書)、来店者の本人確認書類(運転免許証、各種健康保険証など)、印鑑、(必要に応じて)事業内容が分かる資料が必要です。社印や作業印は特に登録などの手続きはありませんが、社内の印鑑の使い分けを規定する場合、社内規定として定める必要があります。
代表者印の選び方
代表者印のサイズは、法務局により「1cm以上3cm以内の正方形に収まるサイズ」と定められています。また、一般的には「会社銀行印よりも一回り大きく、社印より一回り小さいサイズ」がよいとされていますので、会社銀行印や社印の大きさも確認しましょう。
印鑑を販売しているお店では、18.0mmか21.0mmを勧められる場合が多いです。
デザインは一般的に内側と外側で枠が分かれており、外側には会社やお店の名前が入り、内側は「代表取締役印」などの役職が入ります。会社の印鑑なので、設立した人でも個人名は入りません。会社の正式な決定を証明する印鑑なので、複製などが行われないよう、複雑な書体で作成して貰うのがよいです。
一般的に多く使われている書体は「篆書体(てんしょたい)」、次の多いのが「吉相体(きっそうたい)」です。「篆書体」で作っておけば問題ないでしょう。また、印鑑の形は通常の印鑑のような寸胴型ではなく、天丸型という中程がくびれた形の印鑑にした方が、個人の実印との区別がつくので、天丸型を選ぶ人が多いようです。
会社銀行印の選び方

会社銀行印のサイズは特に規定はありませんが、代表者印より一回り小さいサイズがよいとされているので、代表者印のサイズを決めてから会社銀行印のサイズを決めましょう。デザインは代表社印と同様に内側と外側で枠が分かれており、外側には会社やお店の名前が入り、内側は「銀行之印」と彫刻します。
これもお金の出し入れに関係する大事な印鑑ですので、「篆書体」で作っておいた方がよいでしょう。「参考リンク:印鑑ダイレクト:印鑑通販」
印鑑の形は代表者印に天丸型を選ぶ人が多いので寸胴型にしたいところですが、サイズが一回り小さく区別がつくので、個人の銀行印と区別するために天丸型にする人も多いようです。
社印の選び方
社印のサイズも特に規定はありませんが、代表者印より一回り大きいサイズがよいとされているので、代表者印のサイズを決めてから社印のサイズを決めましょう。デザインは会社名が入るので、字のバランスに注意しましょう。
字数やどこで改行にするか、また「~之印」とするか「~印」にするかなどでバランスを取りましょう。会社の文書であることを証明する印鑑ですので、「篆書体」で作っておいた方がよいでしょう。
印鑑の形は四角い印なので、迷うことはありませんが、他の印より使用頻度が高い印鑑なので、丈夫な材質を選びましょう。
作業印の選び方
基本的には、事務書類に手書きの代わりに押す印なので、サイズなどに気をつかう必要はありません。ゴム印は印鑑登録できませんので、書体に気を使う必要もありません。むしろ読みやすい字体を選んだ方がよいです。色々な種類の印がありますが、会社名、会社の住所・電話番号などは揃えた方がよいでしょう。
あとは自分の会社で必要な種類の印を選びましょう。